サラブレッド及び関連馬種の父系系統樹
カレントバイオロジーの論文を参考に、作図してわかりやすくしてみました。(余計わかりにくくなってる気も)
○黒い線は突然変異
○イタリックで示した馬は父系に誤りがある馬
丸が隣接しているところは、この調査では区別が付かず、入れ替わっていても判断が付かないところです。
セントサイモン系は、ダーレーアラビアンのTb-dではなく、アハルテケのTbを持ちますが、これが未知の種牡馬から来ているのか、バイアリータークから来ているのか、この図では分かりません。
ただし、エクリプスはTb-d又はTb-dWであることが分かっているので、それ以降の入れ替わりであることは確定的で、時代的にはヘロド系隆盛の時代となります。オルコックアラビアン起源の可能性もわずかに残りますが。
サラブレッドではその他の誤りは見つかっていないようですが、非サラブレッドですと、クォーターホースに残るダイオメド系2系統がそれぞれダーレーアラビアン系とゴドルフィンアラビアン系のハプロタイプになっていること、ハノーファーのマッチェム系の一部(Ferdinand)がダーレーアラビアン系のハプロタイプになっていること、フライングチルダース系のうち、マンブリノを経由せず、Old Shalesからハクニーになったグループに、ホエールボーンとハプロタイプTと呼ばれる別の父系の混入が見られます(Old Shalesの父は元々フライングチルダース系のブレイズではないという説もあり、この辺は混乱しています)。
追記
Y染色体の変異速度から、三大始祖をさらに遡った、仮想される共通始祖についても言及されています。16世紀後半~17世紀に生きていた1頭のアハルテケに行きつく可能性が高いそうです。
三大始祖とY染色体
サラブレッドの父系に更なる科学のメスが入ってしまいましたね。
速報的に雑感を(後で詳しくまとめます)
①三大始祖は、何れもトルコ系のY染色体を持ち、その中でも三頭ともごくごく近い関係にあるらしい。このタイプはアハルテケにとても多く、アラブ馬とは少し距離がある。
②バイアリータークはTb、ダーレーアラビアンはTb-d、ゴドルフィンアラビアンはTb-gというハプロタイプのY染色体を持っていたと考えられる。なおTbはアハルテケの主要なハプロタイプで、Tb-dやTb-gはそのサブタイプである。
③ゴドルフィンアラビアン系Tb-gとバイアリーターク系Tbは、少なくとも19世紀以降、ダーレーアラビアン系Tb-dについては18世紀以降、一部(④で後述)を除いて入れ替わったりしていない模様。牝系がメタクソだったのでもっと酷いかと思っていたが一安心。
④セントサイモン系Tbは、ダーレーアラビアン系Tb-dではない。未知の第四始祖の可能性もあるが、時期的に三大始祖以外の父系が生き残っていた可能性は低く、キングファーガスの父がヘロドTb、ハンブルトニアンの父がハイフライヤーTbとかその辺の入れ替わりだろう。当時マイナー種牡馬だったWhitelock辺りもかなり怪しい。
⑤(現在クォーターホースに残る)Peter McCue系(血統書上はフロリゼル系分枝)はヘロド系Tbではない。Peter McCue系内部でもハプロタイプが一致しておらず、Old sorrel系Tb-dはダーレーアラビアン系の古いタイプTb-d、Sheik系Tb-gはゴドルフィンアラビアン系Tb-gの古いタイプがそれぞれ別々に混入したのではないか。クォーターホースの初期血統は信用できなさそうである。
ヘロド系シェア
英国クラシックにおけるヘロド系のシェアの推移
ブログの作り方が分からないので、とりあえず作ったものをupしていくスタイル
三大始祖+1のシェア
英国クラシック編