ダーレーアラビアン系のY染色体系統樹

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 長く放置していましたが久々の更新。

 参照元はこちら(論文本文ではなく、付録情報から引っ張ってきています)

Wallner, B., et al.(2017) "Y Chromosome Uncovers the Recent Oriental Origin of Modern Stallions."  Current Biology 27, 1–7.(1年後オープンアクセス)

 一部私の推定に基づいていますが、大枠では正しいはずです。 

 Darley Arabian自身はTb-d。これはByerley TurkのTbと極めて近く(子系統になる)、300~450年前に生きていたアハルテケに遡る可能性が高いようです。三大始祖はいずれもアハルテケか、少なくともトルコ系の馬に関連していたことになります。

 

 Darley Arabianの主要な子孫では、トロッターやサドルブレッドに残るFlying Childers系がTb-dM、サラブレッドのWhalebone系はTb-dW。これらはいずれも1塩基突然変異で、取り違えは無かったものと思われます。Whalebone系内や、ヘロド系の正確性を見るに、サラブレッドの父系は意外にも正しいと言えるでしょう。

 

 ハクニーのFlying Childers系は、Whalebone系やアラブやアハルテケに見られるハプロタイプTとなっており、関係のないところから混入した様です。

 

 残念なことに、サラブレッドにも残るKing Fergus=St. Simon系は、Byerley Turk系と同じTb(一部はTbから更にTb-kに変異)となっています。おそらくByerley Turk系(他の始祖の可能性もあるが)がどこかの世代で入ってしまったと考えられます。

 仮にKing Fergus~Whitelock辺りでヘロド系が入ったとすると、当時はHighflyer系が強かったはずで、HerodやHighflyer、St. Simonを出したにもかかわらずこの父系は衰退したことになり、相当な運の悪さです。間の悪いことに、英国ヘロド系に止めを刺したのが当のSt. Simonでした。そして、その父系もわずかな期間で自壊。。。