1990年~2016年生まれの世代を比較してみた
各世代の強さを、獲得した古馬重賞の賞金総額で比較してみました。
全て生年での比較で、年齢は現在の馬齢表記に統一。
JRAの古馬混合重賞に加えて、海外の国際G1の2着以内、賞金1億を超えるような高額G2の1着(殆ど無いですが)、地方はどれを入れていいか判断が微妙なので、とりあえず2011年以降国際G1に格付けされている東京大賞典のみ過去にさかのぼって合計しています。
海外調教馬が国内レースを制した場合や、海外移籍後の馬(トーセンスターダム等)の賞金は加算していません。
オレンジの線は、4歳時と5歳時のJRA古馬混合重賞の賞金総額の平均で、おおむねこのラインを上回っていれば強い世代、下回っていれば弱い世代ということになります。
この額に対する比率を世代水準(世代レベル)と規定しました。
なお、海外レースに関しては為替の関係で多少の誤差が出ていると思います。
賞金総額ランキング
3位 2015年世代(アーモンドアイ、フィエールマン)※現役馬多数残存
4位 1996年世代(テイエムオペラオー)
25位 2005年世代(ディープスカイ)
26位 1992年世代(マヤノトップガン、マーベラスサンデー)
牡馬賞金ランキング
3位 2002年世代(ディープインパクト、トウカイトリック)
26位 1992世代(マヤノトップガン、マーベラスサンデー)
牝馬賞金ランキング
1位 2015年世代(アーモンドアイ、ラッキーライラック)
2位 2009年世代(ジェンティルドンナ)
26位 1999年世代(ファインモーション、オースミコスモス)
海外賞金ランキング
1位 2015年世代(アーモンドアイ、グローリーウェイズ)
2位 2014年世代(ディアドラ、ウインブライト)
3歳時賞金ランキング
1位 2015年世代
2位 2007年世代
3位 2009年世代
28位 2011年世代
4歳時賞金ランキング
1位 2015年世代
2位 1995年世代
3位 2007年世代
27位 2005年世代
5歳時賞金ランキング
1位 2015世代
2位 2009世代
3位 2014世代
26位 1993世代
6歳時賞金ランキング
1位 2009世代
2位 1996世代
3位 2002世代
25位 1992世代
7歳時賞金ランキング
1位 2010世代
2位 1999世代
24位 1992世代
8歳時賞金ランキング
1位 2010世代
せっかく集計したので各世代の雑感を
・1990年世代
いわゆるナリタタイシン、ウイニングチケット、ビワハヤヒデの世代になります。
筆者としてはマイシンザンに強い思い入れがありました。
世代水準としては、賞金水準にして107%で強いとなります。
なお、これより前の世代は賞金水準が急速に低下する為除外しています。
・1991年世代
ナリタブライアンの世代となります。ただしナリタブライアンは古馬になって故障しているため、古馬での賞金はサクラローレルの方が多いです。
三冠馬が出た年は、世代水準が低いと言われますが、世代水準は106%でやや強いです。
・1992年世代
マヤノトップガンやマーベラスサンデー、ダンスパートナーらがいます。
サンデーサイレンス産駒がこの年から登場します。
賞金総額は期間内最低で、世代水準は87%と非常に弱い世代です。
なぜかは良く分かりませんが、牝馬はそこそこ稼いでいて、20億円を超えています。
賞金の牝馬比率は30%近くと、2010年代の水準ですが、牡馬が弱すぎるのもあると思います。
・1993年世代
エアグルーヴがいますが、賞金の牝馬比率は普通で、それ以外の牝馬は特に強いわけでもないようです。
世代水準は101%で、特に強くも無く普通といった感じです。
・1994年世代
サニーブライアンの世代になりますが、同馬はダービー後故障で引退しており、メジロブライト、ステイゴールド、メジロドーベルらが主力となります。
世代水準は117%で、期間内第3位。非常に強い世代です。サニーブライアンとサイレンススズカが無事ならもう少し稼いでいたでしょうか。
なお、この年からしばらく1998年世代まで?、円高の影響もあり〇外が非常に強くなります。
この世代であれば、上記3頭には及びませんが、ブラックホーク、タイキシャトル、ブロードアピール、シーキングザパールが外国産馬では賞金上位です。
また、この辺りの世代から海外G1勝ちが目立ってきます。
・1995年世代
スペシャルウィーク、グラスワンダー、エルコンドルパサーらの世代です。
この世代が4歳に達した1998年から、ジャパンカップで外国馬が勝つことが殆ど無くなります。
三強の実働は案外短く思ったより稼いではいませんが、稼働期間である4歳時は全世代2位の高賞金となっています。
それ以降は息切れ感がありますが、世代水準としては112%で非常に強いです。
・1996年世代
この世代は何と言っても18億超を稼いだテイエムオペラオーです。
G1を1勝ながらナリタトップロードも10憶、メイショウドトウも9億稼いでいて、3頭合計で37億5000万円になります。うち古馬で稼いだ約30億が加算されています。
賞金総額はついに110憶円を超え、この記録は2008年世代の登場まで破られませんでした。
世代水準は115%で非常に強いです。
なお、この世代からJRA重賞の賞金の伸びが止まり、しばらく100憶円前後をウロウロすることになります。
・1997年世代
エアシャカールとアグネスフライトの世代ですが、両馬は古馬になって殆ど稼ぐことが無く、外国産馬であるタップダンスシチー、エイシンプレストン、アグネスデジタル、イーグルカフェらが主力となります。
特筆すべきこととして香港での4勝があり、これまでにない額の外貨を稼ぎました。
それでも90億円を割り込み、世代水準は90%で非常に弱いです。
・1998年世代
アグネスタキオン、クロフネ、ジャングルポケット、マンハッタンカフェらの世代です。
一般的に強いと認識されている世代ですが、故障離脱が多すぎました。海外でも残念な結果に終わっています。
短距離でカバーしていますが、世代水準は97%でやや弱いです。
・1999年世代
タニノギムレットが古馬になる前に引退していますが、シンボリクリスエスやヒシミラクルが上下の世代を圧倒しました。G2で荒稼ぎしたバランスオブゲームも貢献しています。
牡馬が獲得した賞金は100億を超え史上最多。
反面、牝馬は全くちっとも活躍できずに期間内最下位という面白い結果に終わっています。
賞金に占める牝馬のシェアは、僅か7%です。
世代水準は114%で非常に強い。
なお、重賞以外も含めたJRAの全レース賞金の合計は、この世代が歴代最大(491億4738万円)となっています。
・2000年世代
クラシックで活躍した馬たちは古馬になってからパッとしませんでしたが、ゼンノロブロイやリンカーンが稼いでいます。アドマイヤグルーヴのエリザベス女王杯連覇も貢献。
世代レベルは98%でやや弱いです。
・2001年世代
キングカメハメハやダイワメジャーの世代ですが、最も貢献したのはまさかのカンパニーです。海外賞金も莫大で、デルタブルースとポップロックによるメルボルンカップのワンツー、ハーツクライによるドバイシーマクラシック勝利で、過去最大の8億円が供給されています。
5歳までは平均程度のレベルでしたが、高齢馬の突如の覚醒があり、世代レベルを押し上げました。7歳以降でも19億ほど稼いでいます。特に8歳時の7憶円は史上最大です。
この他スイープトウショウが宝塚記念を制しており、その後の牝馬の時代を予感させます。
世代レベルは113%で非常に強いです。
・2002年世代
ディープインパクトの世代です。
ディープインパクト以外の中長距離は壊滅的で、短距離や牝馬も弱く、ダートは強いですがヴァーミリアンやカネヒキリ、ボンビネルレコードの地方賞金はほとんど反映されていないので、いったいどこで稼いでいるのかわかりませんが、世代レベルは110%もあります。
ディープインパクト1頭分を全て除外しても100%は超えているようです。
・2003年世代
サンデーサイレンス最終世代になります。
とは言え主力はメイショウサムソンやキンシャサノキセキ、アドマイヤムーンなど。
1個下に歯が立たず、5歳時の賞金が少なくなっているのが特徴です。ただし7歳以降は再び稼ぎ出しています。
世代レベルは105%でやや強くなっています。
・2004年世代
ウオッカ、ダイワスカーレットの世代。牝馬の時代の幕開けです。
牝馬の獲得賞金は通常の2倍を超える35億前後で、世代全体に占める割合は34%に達しました。
35憶円はジェンティルドンナの2009年世代に、34%はアーモンドアイの2015年世代に破られるまで牝馬の記録となります。
一方牡馬は非常に弱く、1992世代以来の低さとなりました。
このため合計した世代レベルは100%で普通です。
・2005年世代
ディープスカイやスマートファルコンになりますが、クラシック馬が全くダメで、古馬になってから強くなる馬もそれほどおらず、特に中距離以上では宝塚記念のアーネストリーのみと言った有様でした。エスポワールシチーやスマートファルコンの地方賞金を合わせれば多少ましになったと思いますが。。。
牡馬は非常に弱いと言われた前年をさらに1割ほど下回る低水準で、賞金水準のずっと低かった1992年以来の低さ。
前後の世代は強力な牝馬である程度カバーしていますが、この世代はそれらがいなかったどころか圧迫される形になり、牝馬も過去2番目の低さになってしまいました。
合わせ技で悲惨なことになっています。
世代レベルは驚きの73%です。
海外でも勝てていません。
・2006年世代
ブエナビスタの世代です。
牡馬クラシック組が相変わらず壊滅的で、3年連続で牡馬が非常に弱い世代となってしまいました。
前後の世代は牡馬だけで90~100憶程度稼いでいますが、この三世代は66億円、62億円、67億円となっています。
ブエナビスタが大きくカバーしましたが、それでも世代レベルは92%で非常に低いです。このほかナカヤマフェスタが凱旋門賞で2着になっています。
・2007年世代
ヴィクトワールピサの有馬記念とドバイワールドカップ、エイシンフラッシュの天皇賞(秋)以外はほとんど記憶にありません。
上の3世代が弱かったためか、3、4歳時の賞金がとてつもなく大きくなっていて、2015年世代に次ぐ水準です。ただし、後ろの2世代があまりにも強く、その後は伸び悩みました。
世代レベルは110%で強いです。
・2008年世代
オルフェーヴル世代ということになります。
オルフェーヴルとロードカナロア2頭の最強クラスを抱えており、更に高齢まで活躍する馬も多い世代です。
この活躍で、テイエムオペラオーらの1996世代をようやく上回りました。
世代水準は121%で非常に強いということになります。
なお、三冠馬の世代は一般的に弱いと言われていますが、ナリタブライアン、ディープインパクト、オルフェーヴルの世代は、これらの最強馬の稼ぎを単純に引き算(着順の繰り上げも無し)しても100を超えているようです。
・2009年世代
とにかくこの2頭が勝ちまくり、更にジェンティルドンナが抜けた牝馬路線も別の馬が勝ちまくり、ダートも海外も強いと何でもあり。
それまで5歳時の賞金が40億円をこえることはありませんでしたが、47億円に達しました。6歳時も24億円でこれまた史上最高額です。
世代レベルは130と期間内最強です。
・2010世代
3歳、4歳、5歳とこれちょっと弱いんじゃないかという数字だが、7歳8歳が歴代最多になっていて、平均レベルまで押し上げています。
7歳以降で19憶を加算。
世代レベルは99で普通。
・2011世代
この世代も印象が薄い。
調べてみるとワンアンドオンリーやオジュウチョウサン、アルバートら知ってる馬もチラホラいて、この世代が3~4歳のころ競馬からやや距離を置いていただけか。
モーリスのこともリアルタイムでは完全に抜け落ちている。
ただ少し上世代のゴールドシップやジェンティルドンナらは知ってるので良く分からない。
稼ぎ頭はオジュウチョウサンの様だ。
世代レベルは107で強い
この世代以降はまだ現役馬がチラホラ残っていて、伸びしろがあると言えるかもしれない。
・2012年世代
キタサンブラックの世代です。
ドゥラメンテは古馬であまり貢献できず、大きな賞金を獲得したのはキタサンブラックとシュヴァルグランの2頭です。
ドゥラメンテの記憶が一切なく、マリアライトの宝塚記念を一応テレビで見ていた程度です。なのでこの辺りの事はあまり語ることも無いです。
キタサンブラックの天皇賞(春)辺りから再び競馬を始めていると思います。
世代レベルは105ですが、もう数ポイント伸びるでしょう。
・2013年世代
この年のクラシックも一切見ていないようです。
サトノダイヤモンドが有馬記念でキタサンブラックを撃破したところまでは良かったのですが、その後はいまいちでした。
マカヒキの頑張りには応援してしまいますね。
牝馬率が31%ですが、どの馬が稼いだのでしょうか?
現時点での世代レベルは89
まだ伸びると思いますが、例年通りであれば93~95前後で止まると思われます。
・2014年世代
リスグラシューやレイデオロになります。キセキは来年も走るでしょうか。
稼ぎ頭はリスグラシューとスワーヴリチャードです。
海外賞金がついに10億円を突破しました。
世代レベルは現時点で96となっていて、ほぼ確実に100は超えるでしょう。
・2015年世代
アーモンドアイの世代です。
3歳時に出走したG1、5戦で4勝2着1回と異様な成績を残し、最強世代を予感させました。
5歳までしか走っていませんが、3歳時、4歳時、5歳時の獲得賞金が何れも歴代最大で、既に2009年、2008年世代に次ぎ、最終的に140憶円に達するのではないかと思われます。これは2005年世代の約2倍ということになります。
牝馬率が39%とこれまでにない水準で、牝馬の獲得賞金は44憶円と笑える数字になっています。
また、海外賞金も12憶円に達していて史上最大なのですが、5歳春のドバイミーティングが新型コロナで中止になったことも考慮しなければなりません。2009年世代は5歳春のドバイミーティングで6億円を稼いでおり、アーモンドアイとグローリーウェイズの2頭が出走していれば、更に上積みがあったかもしれません。
なお、牡馬は一般に弱いと思われており、フィエールマンとインディチャンプ以外は目立っていません。ただ、数字上は5歳終了時点で歴代3位の70億円という高水準を出していて、早熟な2007年世代の72憶円、牡馬が圧倒的優勢だった1999年世代の71億円に次ぐ規模です。牡馬のみで国際G1を16勝しており、決して牝馬だけの世代では無いことが分かります。
牝馬の勝利と合わせればG1勝利数は2020年終了時点で28勝(史上最多)。
・2016世代
牝馬率が51%と史上初めて逆転しました。
牡馬クラシック組がそもそも出走すらおぼつかず、4歳終了時点でG1はチャンピオンズCと香港マイルのみとなっています。おまけにそれを勝ったクリソベリルは故障離脱、アドマイヤマーズは引退と、今後どうなってしまうのでしょうか?
現時点での牡馬の賞金は20億円強で、1986年と2010年以来の低さとなっています。1つ上の世代牡馬が、同期間で44憶円超を稼いでいたことを考えると、ちょっとこれはどうかという数字です。
牝馬は2015世代と同様異常に強く、4歳終了時点での獲得賞金は21億円強で、2015世代を1億ほど上回っています。
過去最強クラスの牝馬と、最弱クラスの牡馬を合算して、結果的に4歳終了時点では平均的な水準にまとまっています。
下は牡馬と牝馬に分けたグラフです。