競走馬の成長ピークと近年の晩成化傾向について

前回、各世代ごとの獲得賞金の集計をしていてもう一つネタができたので、更新

 

これまで4歳が競走馬のピークだと思っていたのですが、思った以上に5歳で稼いでいる世代が多いことに気が付きました。

そこで、各年齢のどの時期にどれだけ稼いだか集計してみます。

※なお、この集計では馬齢を全て現表記に統一しています。

 

計算方法は、その月の古馬重賞(3歳以上または4歳以上)の全賞金のうち、各年齢の馬が何%を稼いだかで比較しています。

単純に賞金額としなかったのは、月によって賞金額の変動が大きい事、年によって賞金額が変動しているため、それを打ち消すために行いました。

1981~2017年生まれの世代について個別に集計するとこうなります。

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このままではわかりにくいため、平均を取り、更に各年齢ごとに重ね合わせるとこうなります。

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一見して4歳馬が強いですね。

また、スペシャルウィークディープインパクトダイワスカーレットアドマイヤムーン、マタモクロスなど4歳で引退する馬や、ナリタブライアントウカイテイオーシンボリルドルフの様に故障で弱体化や数が使えなくなる馬も多いことを考えれば5歳馬の健闘も驚きです。

3歳馬は12月で古馬と同等となるようです。

これは有馬記念が3歳馬優勢となっているためでしょう。

あるいはオープン馬の少なさを考慮すれば、12月に2キロ差と言うのはやや3歳有利なのかもしれません。

なお、ジャパンカップは3歳馬の成績があまり良くなく、去年もコントレイルで菊花賞からのローテがどうかと言われましたが、実際は近年ジャパンカップを制した3歳牡馬は全て菊花賞経由組です。

菊花賞を回避してジャパンカップに挑んだ牡馬は、エルコンドルパサー以降全敗しているので、今後とも伸びにくいように思います。

6歳になると流石にトップホースの引退が多すぎて下がりますが、残っている馬は成績を落としていません。

7歳以降は数も減り成績が落ちていきます。

 

次に牡馬と牝馬個別のデータ

牡馬のみの方は、牝馬限定戦を除いたレースに対する割合となっています。

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重賞賞金は8割が牡馬のもののため、全体グラフとあまり変わりませんね。

ひとつ特徴的なこととして、夏場にグラフのへこみが見られますが、これはなぜかこの時期牝馬が活躍する傾向があるためです。

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夏場に牝馬が強く、冬場に弱い傾向がみられます。

冬弱いのはダートが多いためかと思いましたが、2月以外と12月以外はそれほどでもなく、コンスタントに牝馬限定戦も設定されているため、謎と言えば謎です。

夏に強いのは、ひと昔前に「夏は牝馬」と言われていましたが、実際に牝馬が強いのか、それともこの格言を受けて、関係者が牝馬を積極的に使った結果なのかはここでは分析していません。

なお、牝馬で重賞を勝つような馬は大半が5歳で引退するため、6歳以降の活躍は牡馬と比べて小さくなっています。

 

ここから前回データを集計していた時に気が付いたことになります。

近年競走馬の晩成化が進んでいるようです。

一般的には、早熟化が進んでいると言われますが、どうもそうではないようです。

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2010年以降(2007年生まれ世代以降)のデータだとこうなります。

サンプル数が11世代のみのため多少データが荒れていますが、全体データと比較すると5歳馬の強さが目立ちます。6~8歳も多少強いようです。3歳と4歳は弱体化しています。

個別データを見てみると、90年代は殆どの世代が4歳時に最も稼いでいましたが、2004年生まれ以降の世代では、2007年生まれと2014年生まれ世代を除き、全て5歳時に最も稼いでいました。

 

全体としてのトレンドはこうなります

これはその世代が(3歳以上及び4歳以上の重賞で)獲得した全賞金の50%に、いつ頃達したかを示したものです。

なお、賞金額は変動するので、その年JRAが実施した古馬重賞の全賞金額で補正してあります。

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80年代から90年代中頃の世代では、牡馬は5歳の3月頃に折り返し地点を迎えていましたが、2000年代以降は5歳の7月頃になっています。

理由はいくつか考えられますが、体感として故障で引退する馬が少なくなったことや、クラブ全盛で、5歳まではとりあえず走るようになったことなどが考えられます。

おそらく競走馬の能力ピークは元々5~6歳前半で、故障や早期引退により4歳が最も稼ぐ時期となっていたのが、上記のような理由で賞金ピークが近年5歳に移ってきているのではないでしょうか。

牝馬は今も5歳引退が主流のため牡馬よりは緩やかですが、やはり全体として活躍時機が遅くなっている傾向があります。

 

ここ数年で降級廃止という晩成馬に有利になるような改革と(ただし高齢の下位OP~条件馬は不利か)、新馬戦や未勝利戦の繰り上げと言った早熟馬有利な改革が行われており、今後に注目です。